嘱託医師 医学博士
中村 薫

嘱託医師 医学博士
中村 薫

 一般社団法人日本助産所会 嘱託医師の中村薫と申します。この場を借りてご挨拶申し上げます。
 さて、お産とお産に係る現状を少し解説しますと、まずお産とは簡単に言うと命懸けの生理現象です。そしてこの命懸けの部分に対して周産期医療は多大な貢献をしてきましたし、現状もしております。多くの命を救っているのです。ただし、周産期医療において損なわれた部分もあります。それがお産における生理現象の部分です。当たり前に陣痛が来て当たり前に産道を通って赤ちゃんが産まれてくると言う生理的なお産が減り帝王切開によるお産が増えたのです。しかし近年の研究で自然陣痛を引き起こす内因性オキシトシンという物質が母性ホルモンの本体である事が判明し世界に衝撃を与えました。予定帝王切開や促進剤(外因性オキシトシン)によるお産では内因性オキシトシンの分泌がなく、お産の生理現象が損なわれおり、それは母性が損なわれることに直結していたのです。
 また母性が損なわれた事による不適切な母子関係は子供にうつ病、不安症、強迫症状などの精神疾患を引き起こすことも分かっています。
 この事からこれからの周産期医療は少なくとも過剰医療の部分を排除し、お産の生理的な部分を出来る限り損なわないようにする事が今まさに求められているのです。
 一方、助産所とは元来産婦さんに対するきめ細やかな精神的サポートもあり、お産の生理現象の部分が守られ、かつ母性が最大限に発現出来る所と私は認識しております。
 ただ、お産の命懸けの部分(医療行為が必要な部分)に対しての対応は十分とは言えないため「危険な所」と揶揄されてきました。お産における命懸けの部分に価値を高くおけばこのような揶揄は当然ですが、これからはお産の命懸けの部分と生理現象の部分を同等に価値あるものとして見るべきだと個人的には強く思っています。その価値観は医療機関と助産所が対等な関係で、良い協力関係を作る事へと繫がり、それが理想的な周産期医療の在り方ではないでしょうか。医療機関と助産所がタッグを組んで産婦さんをサポートするという構図です。
 これをお読みの皆様へ、どうぞ助産所、助産師の果たす役割の重要性と一般社団法人日本助産所会がそのような方向性を持っていると言う事をどうぞご理解くださいますようお願い致します。